見事に黄ばんだ古いスーツ
  • 2014年02月13日

見事に黄ばんだ古いスーツが広島のS屋さんから送られてきました。
S屋さんかぁ・・・懐かしい。

 高校の時でしょうかあ、当時はアイビー(VAN)ブームで、ボタンダウンに紺ブレ、コードバンドにコインローハ・・・。バイトで貯めお金を握りしめて、ワクワクしながらS屋さんに通ったことを今でも思い出します。当時S屋さんは、アイビー小僧の憧れの的でしたからね。

 さてさて、そのS屋さんから送られてきた黄ばみのきつい古いスーツを見てみますと、特にパンツは前も後も全体にまんべんなく黄ばんでいました。

 こういった古い品物は見た目よりも結構生地が傷んでいる場合がありますので、まずは生地を伸ばしてみて、みし、みし・・・という音がすると要注意。洗浄時にぼろぼろになってしまうこともあるのです。
ですから、、ちょっと引っ張ってみて「・・・・・」大丈夫のようです。
それと、汗や汚れが残って黄ばむ場合は、部分的に黄ばみがきつかったり、ムラがあったりするものなのですが、今回の古いスーツように全体が均一に黄ばんでいるもの珍しいです。
蛍光灯のヤケだったら光が当たってる場所と当たってない場所とで差がでるものですが、多分このスーツは湿気によって長い時間をかけて徐々に酸化されて黄ばんでいったものだと思います。

 また、ジャケットの黄ばみが少ないのは、パンツは保管されて履かれていなかったのでは?逆にジャケットは時々着用されていたのだと思います。
襟袖の裏側には黄ばみと共に結構キツイ皮脂汚れがありますから・・。
などとあれこれ推理するのも、仕事をしながらの楽しみの一つです。
メーカーは「ポロ・ラルフローレン」。グレンチェックで素材は麻100%。

「へぇ~~」取扱いタグをみると、オンワードが製造したものですが、オンワードがライセンス生産をしていたのは7〜8年前までですし、生産者記号もC-OS-・・・ではじまる1998年以前の表記方法ですから、やはりかなり古いスーツです。

こういった古いスーツ(生地)の古いきばみのシミなど、生地の色も動かしていて、洗浄、特に漂白しているといつの間にか白っぽく色剥してしまうから、まず慎重にテストしてからの作業となります。
テスト結果はオッケー。それから本格的な黄ばみの除去作業の工程に入っていきます。黄ばみを取るには漂白が一番です。が、その前に全体を覆っている油分をドライクリーニングでまずは落としていきます。
これは油分を除去しておかないと、漂白もあまり効果がないからなのです。
その際、黄ばみを軽減する効果のある過酸化水素を含んだ薬剤を全体にスプレーしておきます。
軽い黄ばみの場合はこの工程だけで黄ばみが除去される場合もありますが、今回は少し薄くなればいい程度だと思います。
ドライから出たスーツは乾燥させて漂白剤に漬け込みますが、使うのは衣類を傷めないプロ用の中性の漂白剤です。

 まずは45度くらいのお湯に漂白剤を入れスーツを漬け込んで、20分程度漬け込んで様子を見みます。
「よし・・」これで上着は黄ばみがほぼ取れましたが、パンツは元々の黄ばみが激しかったのでまだかなり残っています。それで、パンツはもう20分程度漬け込みます。
 この間に上着は人体整形乾燥をして乾燥させます。
 そして20分後、パンツを取り出して濯ぎ、乾かしてから上着と比べてみると、まだまだパンツの方がかなり黄色さが目立ちます。しぶとい!

 それで、さらに20分程度パンツを漂白に漬け込むことにしました。
ここで裏ワザのアンモニアを二滴ほど漂白剤に入れます。これはアンモニアによって中性の漂白剤がアルカリ性に変化し、黄ばみが分解されやすくなるからです。
こうして、上着は20分、パンツは様子を見ながら合計約60分漂白剤に漬け込んで、やっと上下で着てもおかしくないくらいまで黄ばみが除去されました。

ジャケットやパンツの裏表の汚れや黄ばみをまんべんなくチェックして、「よしっ!オッケー!」納得した綺麗さに戻りました。この後はシリコーンドライ(トリートメントコーテング)で風合いと光沢感を甦らせて、ジャケットとパンツの裏側の隅々をコテコテとハンドプレスした後、表を機械(アームホール・ショルダー・袖・インシーム、アウトシーム・カラー・ラペル)プレスした後、タッチアップハンドブレスと手間と時間をかけて本来の姿に仕上げていきます。

とにかく、白と黒、グレイと黒で構成された本来のターターンチェック(グレンチェック)に戻ることができました。めでたし、めでたし。(つづく)