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2019年10月3日

「志」10/3(木)
「すすきクリーニング」
リニューアルオープンにあたり店主挨拶


創業1947年(72年間一途なこだわりプレス職人の店)

すすきクリーニングは、満州から福井に帰国した祖父が
戦後間もない1947年に創業致しました。
祖父は生真面目な性格から典型的なこだわりのアイロ
ンプレス職人の店を営みました。
そして二代目の父も祖父の影響を受けてアイロンのプ
レスには特にこだわった店作りを行っていました。


大学卒業後福井に帰る

私は名古屋の大学を卒業後、2000年から実家の「すす
きクリーニング店」に入りました。当時は、多くのクリー
ニング店同様、割引やイベントでそれなりに売り上げも
ありましたが、何か物足りなさが漂う日々でした。
 当時からスーツとシャツは好きで特別興味があり、パ
ターンオーダーのスーツを作ってはプレスの真似事をや
っていました。
たまに入ってくる高級品の生地の光沢やディテールの
美しさを見るにつけ、高級品をやりたいと、ただ漠然と
思っていた頃でもあります。


理想のクリーニング「ナチュラルクリーン」との出合い

「すすきクリーニング」に帰って8年が経過した頃、福井
のフルオーダースーツ屋さんからの情報で、千葉県君
津市にウォータークリーニングの「ナチュラルクリーン」
という会社が、有名百貨店やセレクトショップから好評
を得ていると知らされました。
私は意を決してナチュラルクリーンへ見学の申し込み
を行い、初めての同業者にも関わらず快く引き受けて
いただき、ドキドキで千葉に向いました。
初めてナチュラルクリーンの君津工房を見学させてい
ただいた時の衝撃は、今でも鮮明に脳裏に焼き付い
ています。
工房に入ると一着50万〜70万の超高級スーツやビス
ポークスーツ、そしてドレスシャツがずらり。しかも本
当にその超高級スーツを水で洗ってる。
最高の技術で洗って、最高の技術で仕上げる小細工
なしの王道のクリーニング。これしかない!!
漠然と思っていたクリーニングの理想の姿が現実に
目の前に現れた瞬間です。


厳しい「ナチュラルクリーン」での修行

代表に心よりお願いし、また、実家の父母や妻には自
分の思いを伝え、早々福井より千葉へ移り住んでナチ
ュラルクリーンでの修業が始まりました。配属はアイロ
ンプレス部門でした。
毎日憧れの超高級スーツと向き合いながらの日々、
諸先輩方の指導を受け、また、イタリアのサルトや有
名テーラーのプレス技術を学び、常に最高の作品作
りを目指し、妥協なく理想を追い続けました。
ナチュラルクリーンの四年半の修行は、とても厳しく、
そして優しく。プレス技術やシミ抜き技術だけではなく
、職人としての基本中の基本である掃除や整理整頓
の大切さ、人間性を磨くうえでは、他者への思いやり
や優しさ、情熱や探求心の大切さ、そして節度や礼
儀正しさなど、プロとしてのあるべき姿を学びました。


三代目店主としてどう生きるのか

父の病気が引き金となって実家の「すすきクリーニン
グ」に戻って6年が経ちました。
途中、父の死によって私は三代目を継承し店主となり、
家族やお店に対して、今まで以上により責任の自覚
も生まれました。
とにかく腕を鈍らせてはならないと、ナチュラルクリー
ンから送られてくるドレスシャツや超高級スーツの仕
上げを毎日行い、定期的に千葉のナチュラルクリーン
に通ってはプレス研修で自分のレベルを確認改善し、
また、水洗いの研究を重ね続けての今があります。
また、昨年からナチュラルクリーンが主催するビスポ
ークテーラーの水落卓宏さんが講師を勤める「テーラ
ードブレッシング研究会」(詳しくは別紙参照)では、目
から鱗が落ちる連続でした。
知識やプレス術を学べば学ぶほど、本当のことを知
れば知るほど、奥が深く、上を目指さなかったら自分
の良心を偽ることになる、と強く思うようになっていき
ました。


何故店舗内をオープンにしたのか?

今回、思い切って店舗の改装で仕上げも洗いもオー
プンに致しました。
その目的は、当店「すすきクリーニング」の全てを隠
すことなくお客様に見て頂き安心してご利用頂くため
であり、また、まだまだ未熟な技術や精神の弱さの
退路を断つためでもありました。
道元禅師の正法眼蔵の中にある「人間ぬくぬくし始
めるとろくなことをせぬ。追いつめられると龍が玉を
吐くように黄金の玉を吐く」。これは、私がナチュラル
クリーンの修行時代、何度何度も代表から叱られ、
教えられ、身体で学んでいったことでした。


お客様にとってパーソナルなお店でありたい

最後になりますが、私は従来の洗って仕上げるとい
うクリーニング店とは違って、ナチュラルクリーンの
ようにお客様の要望に個別対応できるパーソナルな
お店でありたいと思っています。
まだまだ未熟ではありますが、安心して大切なお品
物をお任せいただけるよう、全力を尽くしてまいりま
す。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
                         
令和元年十月八日
すすきクリーニング
          三代目店主 鈴 木 尚 学


十月八日にリニューアルオープンするすすきクリーニング
の店主挨拶文が送られてきました。


「代表、見ていただきますか?」「いいよ」


見て、少し手直しした内容が上の文章です。


彼の情熱がヒシヒシと伝わってきます。


いいよね。


「Tailored Pressing研究会」とは?

  スーツは大まかには既製品と注文服に分けられますが、
ハンドメイドのビスポークスーツ以外はブランドタグのつく
既製品やパターンオーダーやイージオーダーなどの注文
服も、すべて縫製工場で作られています。
それら縫製工場で作られるスーツは主に縫製が完成され
て(組み上がって)から主にマシーンプレスを行っていきます。

しかし、ハンドメイドのビスポークテーラーでは、裁断され
たばかりのパーツから既にアイロンワーク(クセ取り)を行
い立体に下パーツを、更に立体へと順次縫って(組み上げ
て)いきます。
従って、立体的なフォルムやシルエットなども型崩れしに
くくなります。  
例えてみれば、単にドライヤーでブロー(乾かすだけ。こ
れは一般的なクリーニング店のアイロンブレスと言ったら
分かりやすい。)しただけの髪型と、パーマをかけ、頭を
洗っても消えないクセをつくっていくのが、美容師の腕で
あり、スーツであればテーラーの技術力です。
これが縫製工場で作られたスーツのプレスと、テーラーの
作るビスポークスーツの立体的なシルエットを生み出す
プレス術との大きな違いなのです。

さて、この「Tailored Pressing研究会」では、ビスポーク
テーラー水落卓宏氏の指導によって、テーラードの技術
に伴ったプレス術を学び、ウォータークリーニングされた
スーツをクセ取り技術でより立体的に仕上げられるトレ
ーニングを定例的に行っています。
また、「洗いのプロと服のプロが手を組むとクリーニング
に革命が起こる」と、men'sプレシャスのウエーブサイトに
「Tailored Pressing研究会」のことが掲載されましたが、
まさしくこの「Tailored Pressing研究会」は、それをより具
体的に実現させていく会でもあります。



12:48, Thursday, Oct 03, 2019 ¦ ¦ コメント(0)