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2017年11月6日

「水洗い直し」11月6日(月)
昨日の問い合わせで、

「他の高級クリーニング店に水洗いで出したスーツを着用
しようとして(クリーニング後そのままクローゼットに閉まって
おいた)出してみたら、襟にはシワが入っているし、背中や袖の
裏地はシワシワですし、ポケットの裏もシワシワですし、よく、
見ると全体的に型崩れしているし・・・、そんな状態なんですが、
もとに戻していただくことってできるのでしょうか?
スーツはヒューゴ・ボスです。」。

「スーツはきっちり復元しますから、
伊勢丹の方へ持っていってもらいますか?」

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ということで、
すぐに伊勢丹に持ち込んでいただき、
スタッフにそのスーツ2着を工房に持ち帰って
もらいました。


それで、
朝礼ミィーテングで、
スタッフ全員の前でこのスーツの問題点を
説明しました。

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1.風合いの変化

塩素の入った水道水と薬品を入れて洗ってるんで
しょうね。ジャケットもパンツも生地全体がざらついて硬く、
ゴアゴアした感じです。ウールのしっとり感が感じられません。
水洗いは「水」で決まります。やはりの「水」の違いが
大きいですね。

うちの場合はクラスタルウォーターで洗う。
これで全然水洗いのクオリティが違います。
以前、某業務洗濯機メーカーさんの技術の皆さんが大勢
見学に来られたことがあったのですが、「ほんとうに水で洗ってる」
と、びっくりされてました。他のクリーニング屋サンの水洗いは
縮みを押さえるために薬品を一杯入れてるので、驚いたとも。
うちにとってはとても不思議な感じでした。

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2.シームの縮み

袖付けなど芯地を何枚も重ねて縫い付けてある部分ほど、
縫い糸の縮みによる影響が大きく、ピリつきが起きてます。
本来は、乾燥時にシームを伸ばして整形しながら乾燥し、仕上げでも
圧と熱をかけ、まず裏からきっちりプレスして袖付けの形を整えていく
のですが、まあ、普通はやらないですよね、時間かけてそこまでは。

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3.シワ感

表地、裏地共に全体にシワっぽいです。
水洗いした場合は、乾燥時の人体整形で、
全体の形やシルエットを作り、生地のシワを伸ばしておかないと、
完全に乾燥してからアイロンプレスで伸ばそうとしても
難しいです。

裏地は、他店で仕上げ時にプレスされていますが、
素材のキュプラは、高温でしっかりプレスし、プレス後は蒸気の
湿気を残さないように取っておかないと、時間が経つとシワが
戻ってしまうわけで、裏地もポケット裏もシワシワですから
プレスが甘かったんでしょうねえ。

他店で水洗いをしたスーツをよく預かりますが、
気付いてないんじゃないかなあ、プレスが甘いとシワが
戻るってことを。

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4.型崩れ

スーツは、表地と芯地、裏地が正しく重なり合って
張りやコシを出し、シルエットを形作っているわけですが、
水で洗うことでこの位置関係が崩れると、
形が決まりません。

だからしつけを行ったり、洗う時にネットで巻いて
位置が崩れない工夫をしないと、崩れたものを直すのは
非常に手間と時間を要します。そこまでやってないから、
こうなってるわけで、当然ですが、このスーツは
洗い直して一からきっちり仕上げていきます。

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うちの洗いや仕上げの様子を日本アパレル協会が映像に撮ってくれています。
これをご覧いただけばウォータークリーニングの洗いと仕上げ工程がよく分か
るんじゃないかな。



11:57, Monday, Nov 06, 2017 ¦