FAQ

よくあるご質問

ゼニアやブリオーニ等、クチュール物のスーツの洗いの内容について教えていただけますでしょうか?

以下「日々是笑日」より転載

「染み抜き・色修正・修理等のない一般的なスーツの洗いの手順」

 

●チェック検品カルテ作成→●ジャケット・パンツのしつけ→●シルクガンの前処理(ジャケット部分は襟・脇・袖口・ポケット回り。パンツ部分はシック・裾回り。→●シリコーンドライで油性・皮脂汚れの除去。→●ネットに巻いてクラスタルウォーター&マイクロバブルで水洗い。→●ジャケットは人体成形乾燥機で裏地のシワ伸ばし。●ジャケットは人体成型乾燥機でハンドフィッシャー(ハンドアイロンを軽く当て)表地の地の目修正・襟のゴージ、キザミ修正。袖、肩の微調整。●人体成型乾燥機からジャケットを外しプレス台で背裏と袖裏をブロープレス(本格的なプレスはバキュームプレスで)●ジャケットをトルソー(人形)に着用させ地の目・縫い目・袖の下がり具合等を確認。微調整。●パンツはパンツ専用乾燥機パンツトッパーで乾燥並びに小ジワ伸ばし。●ジャケット・パンツとも静止乾燥機で最終乾燥。●最終乾燥後初めて本格的にプレスの仕込みに入る。

 

今日のスーツの洗いはゼニアのオートクチュールとブリオーニばかりです。時々イセタンメンズやアルマーニが入るぐらいで、早朝から38着洗いっぱなしでした。ゼニアやブリオーニの場合はどちらも40~65万ぐらいのスーツです。

普通のスーツと何が違うかというと、まず一つはクチュール物はハンドメイドだということです。そして二つ目は、生地自体が全然違うということ。着た時に一番着心地がいいように縫う時の糸のテンションを調整しながら手縫いしてますから、意図的にすごくゆるく 縫ってあるところもありますし、力が加わると切れるように、弱い糸を使ったりもしています。

こうした着心地を良くし、生地を傷めないための心使いは、洗う時には、逆に、型崩れのしやすさとなって表われます。ですから、しつけをしっかりしたり、洗う時に芯地が動かないように固定して洗うなどの工夫が大切になりますし、洗ってから乾燥しながらどれだけ元の通りに整形できるかがもっとも重要です。

洗い上がりの人体整形乾燥では、まず、裏からかけて、裏地に入った細かいシワを全体的に油分を噴霧しながらハンドアイロンで伸ばしておきます。このクラスのジャケットの裏地は、糸が細く、撚りも強いため、水に濡れると細かなシワが入って、そのまま乾いてしまうと取れなくなります。

次に、表に反して、スチームを出しながら、消臭抗菌剤と艶出し加工剤を噴霧し、温風の風圧を調整しながら、整形乾燥していきます。風圧が弱いとシワが伸びませんし、強すぎると、このクラスの番手の細い生地は伸びてしまいます。ですから、適度な風圧にして、しっかり乾燥するまでじっと置いておきます。

この時間も大切で、早く人体から外してしまうと、乾燥が不十分なため、せっかく伸びたシワがまた戻ってしまいます。ですから、ここはじっくりと形を作っていきます。このクラスの水洗いほど、洗い担当者の技術や経験を問われるものはありません。ですからこのクラスの洗いが終わると、物凄く神経を使っているのでしょうドッと気が抜けます。

なるべくクリーニングはしない方がいいと提唱される方に、「ゼニアのオートクチュールやブリオーニを水洗いしました。」とお伝えすると、「ゼニアのオートクチュールを?ブリオーニを?言語道断!」と御立腹されること間違いありません。ただ、今日水洗いを行っているお客様たちは皆さん水洗いファン。水洗いご希望の方々ばかりなので、期待に応えて丁寧に水洗いさせていただきました。

※ブランド物の場合ジャケットは、モノを見て水洗いするかしないかを決めています。水洗いしない場合もする場合も襟回り・脇・袖口・ポケット回りは必ずシルクガン(前処理技術)で汗抜きを行い、背裏や袖浦等の裏地はすべて消臭抗菌処理をいたします。

 

ただ、この最高級クラスは正直言ってイタリアのサルトリアが要望した、前処理後は蒸気や消臭抗菌処理(しっかりと消臭抗菌剤噴霧)の方がいいと僕は思っています。
また、水に入れても汗抜きの30秒ぐらい(30秒と脱水があれば汗はほぼ抜けます。事前に前処理で汗抜きもしていますし)濯ぎ2回の1分30秒ぐらいかな。やはり微妙なディテールを崩していけないので・・・。
パンツはアンモニアや汗等の水溶性の汚れが気になりますから、シリコーンドライで油・皮脂汚れを除去した後はネットに巻いての色落ちや型崩れしないような方法で短時間の水洗い(クラスタルウォーターとマイクロバブル)がいいと思います。ただ、無理は禁物なので、最終的に洗いに関しては技術者にお任せいただければ、そのスーツに関しての最適の洗いを選択していきます。どうぞ安心してお任せいただけばと思います。